ものづくりの
現場
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四国の木地師 ①
文・ミンゲイサイコウ
編集部
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ひとつの木椀のむこうに
私たちの暮らしのまわりには、たくさんのうつわがある。
土や石のうつわ、ガラスのうつわ。金物のうつわ、紙のうつわ。
長い歴史の中で、ヒトはさまざまな素材で、食べることにまつわるさまざまな道具を作ってきた。
その中でも、日本人がもっとも親しんできたのが木のうつわだ。
山と森にめぐまれたこの国では、祖先たちは身近にある木をつかって、家屋から家具、生活道具にいたるまであらゆるものを作ってきた歴史がある。世界的にみればむしろ珍しいといわれる木のうつわだが、陶磁器が希少なものだった江戸時代の終わり頃まで、じつはほとんどの日本人は木のうつわを使って食事をしていたのだそうだ。
食台に置かれた、ひとつの木椀。
その向こう側に想いをはせてみる。或る森の、或る一本の樹が、ひとつの木椀に姿を変える。その過程には、一人ではない職人たちとそれぞれの専門技術がタスキのようにつながれていたはずだ。
ひとつの木椀ができるまでをリレーに例えるなら、その第一走者が「木地師(きじし)」だと言えるだろう。みずから伐採した木材を、ろくろとカンナを使い、うつわの形に掘り出し、漆などの塗料をコーティングする前の「木地(きじ)」につくる職人たち。150年くらい前までは、全国あちこちの山中で仕事をしていた彼らの姿も、今では漆器の産地でしか見られないものとなってしまった。
そんな木地師のことをもっと知りたくて、今回たずねたのは、漆盆の産地として知られる香川県。おだやかな瀬戸内海をのぞむ東かがわ市の一角に、古家喜義(ふるやきよし)さんの工房はあった。
ミンゲイサイコウ
編集部
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