民藝
界隈

初代 長次郎作 二彩獅子

文・岡本 純一

初代 長次郎作
二彩獅子

あー、いいっす。たまらん。
数年前に樂家代々展で出会って
もう一度、お会いしたいと思っていた獅子様

造形力がハンパないです。
友人がコアなフィギュア制作会社にいるので是非作ってもらおうと思いました。
美大受験予備校に行ってた頃、
三浪目のY先輩の塑像が神だと思ってたのですが、
ぶっちぎりで超えてきました。

さてさて
話は変わりますが、
柳宗悦さんは、若かりし頃、白樺という同人誌で、「考える人」で有名なオーギュスト・ロダンの彫刻を仲間たちと特集しました。

その後、白樺の同人たちでロダン宛に浮世絵を30枚ほど送ったところ、ロダン彫刻が3点返礼として贈られてきたという話は有名です。
(僕は美大で彫刻を専攻していたので、その界隈では有名な話?)
その時、贈られてきた彫刻を横浜港に取りに行ったのが柳宗悦さんでした。
この辺の下りは下記サイトで詳しく書かれています。

これはまだ、民藝という言葉が生まれる
10年ほど前の話です。

ここで、長次郎の獅子に戻りますが、僕には、ロダンを凌駕する造形に感じます。というか心が震えます。
白樺のロダン評では、
『自分はここでかう断言する。彼は最も深く生を味わった人だ。さうしてそれを真に顕(あらわ)すことの出来る人だ。』と武者小路は評していますが、これと同じ感想を長次郎の造形に当てはめることができます。

長次郎は、千利休に見出された元は瓦職人だったと言われています。鬼瓦などいわゆる道具(建築資材)をつくる職人であったという部分は、何か民藝とつながるような気がします。
長次郎の父は、朝鮮からの陶工であるという説もあるので、もとは無名の職人であったのでしょう。

どういう経緯か、いち瓦職人が千利休に頼まれて茶の湯のための楽茶碗を焼いた。現代で言うと、茶の湯という当時最先端の社交場に新しい流行をプレゼンするためブランディングデザイナーである千利休が職人・長次郎にモダンな黒茶碗を発注して、伝統的な低下度釉(鉛や錫を使った低温で焼成する焼物)の技法を駆使して出来上がったのが、初代長次郎作の黒楽茶碗です。と言ったところでしょうか。
今でこそ代々続く大芸術家のお家柄の樂家ですが、樂家初代長次郎は一職人に過ぎなかったかもしれません。
長次郎のつくる茶碗や獅子の造形に、民藝と同質の美しさを見るのは僕だけではないはずです。

 

 

白樺派とロダン彫刻

http://www.shirakaba.gr.jp/

 

岡本 純一
岡本 純一(オカモト ジュンイチ)

陶器作家、Awabi ware代表。1979年兵庫県淡路島生れ。武蔵野美術大学大学院彫刻コース修了。同大学助手、非常勤講師を経て、2010年に地元淡路島にUターンし、「民藝は可能か?」をテーマに器の制作を始める。2016年、株式会社あわびウェア設立。2018年民藝入門書を目指した「ミンゲイサイコウ」を立ち上げる。