民藝
界隈

お道具紹介 ④

文・岡本 純一

東南アジアの軽快さ

15世紀東南アジアのどこかで作られた貴族向けの器たち

これらのお皿は、民藝の言うところの民衆ではなく、
限られた位の高い貴族たちが使っていました。
当時は日本にも輸出され桃山時代の茶人に、大変好まれたといいます。
今日でも茶道具に見立てられ、度々見ることがありますし、古道具屋さんなどでも並んでいます。

民藝は、民衆的工藝の略語で、
庶民の生活のために作られた道具だからこそ宿る、健康的な美しさ、を意味します。
はてさて、貴族のための器は、民藝に属するのでしょうか?

写真にある青緑のお皿は青磁と言われ、
日本の国宝にもある釉薬で、高貴なものとされています。
でも、なんだか、真ん中に輪っかのようなものがあったり、高貴というより、間抜けな感じ。
そんなところに、軽快な親しみを感じます。

貴族たちも偉ぶってなくて、わりかし身分に関係なく、ワイワイやってたのかもしれませんね。
だからこそ、民藝的な健康美を感じる。

ちなみに、この輪っかは、「蛇の目(ジャノメ)」と言われるもので、器を重ねて焼成する際に、器同士が引っ付かないようにする工夫です。上に乗っかるお皿の高台の形に釉薬を丸く剥がしてあるのです。
装飾ではなく、窯詰めの都合で仕方なく残ってしまう形なのです。

ヘビの目と思ってみたら、これまた愛嬌があります。

岡本 純一
岡本 純一(オカモト ジュンイチ)

陶器作家、Awabi ware代表。1979年兵庫県淡路島生れ。武蔵野美術大学大学院彫刻コース修了。同大学助手、非常勤講師を経て、2010年に地元淡路島にUターンし、「民藝は可能か?」をテーマに器の制作を始める。2016年、株式会社あわびウェア設立。2018年民藝入門書を目指した「ミンゲイサイコウ」を立ち上げる。